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1月理事会 理事長あいさつ

2017.2.02

新年を迎えて初めての理事会になります。改めて今年もよろしくお願いします。
 新年を迎えるに際して、様々な予測が各方面からされていました。多くの人が言っ
ていたのが、予測困難な未来、不確実な未来、国際協調や相互依存から保護主義・自
国中心主義へ、分断と排外主義の時代の到来、民主主義の危機、などという言葉では
なかったかと思います。
戦後の国際社会の国際協調や相互依存の土台を築いてきた米国で、自国中心主義、米
国第一主義を掲げるトランプ氏が20日に大統領に就いて、こうした懸念が一層大き
く、現実感をもって世界中に広がる中で今日を迎えています。冒頭の懸念や危機感
は、欧州のフランスやオランダ、ドイツなどで相次ぐ総選挙の行方で試されると言わ
れていますが、平和のために主権を分かち合う欧州共同体の壮大な実験がとん挫する
ことにでもなれば、国際社会全体での民主主義の退潮にもつながりかねないとも心配
もされています。
 こうした背景は、グローバル化による産業構造の変化や技術革新で中間層が貧困や
格差の波に飲み込まれて反乱している、共感や連帯の絆が細って、怒りの矛先が既成
政党や政治家、移民や難民に向かっている構図として指摘されています。エリートや
移民を敵に仕立てて怒れる中間層を囲い込んで、あるいは迎合して勢いづいているの
がトランプ氏をはじめとする排外主義の政治家です。これは一種のポピュリズム(大
衆迎合)と言われるものですが、ポピュリズムは本来「貧しい労働者を代表する」と
いう左派ポピュリズムとして表れてもおかしくないのに、現状はほとんど右派ポピュ
リズムで表れているという特徴があるようです。国籍や人種で弱者を攻撃する方が直
接的でわかりやすいですし、SNSなどの発達で事実よりも感情が優先する時代背景
もあると言われています。また、もう一つの特徴として、ナチスドイツや日本が世界
対戦にのめりこんでいった時代の経験からしても、本来の民主主義で超えてはいけな
い一線をどこで越えたのか、後戻りできない地点はどこだったのか、同時代を生きて
いる人間にはなかなかわからないのだそうです。
 そうしたことを踏まえて、おかしな勢力に権力が掌握されないようにと設計されて
いるはずの憲法システムや政治システムがトランプ大統領の暴走を抑えることができ
るのか、世界的にも大変注目されているように思います。しかし、こうした事態は、
いまの日本でも同じように切実な問題になっているわけで、イギリスやアメリカのよ
うに鬱屈したエネルギーの噴出にはいまだ至っていませんが、マグマは確実にエネル
ギーを蓄えています。日本全体が「帰還不能地点」に近づいているという危機認識も
大切でしょうし、また、格差と貧困が広がる時代であればこそ、社会保障制度の中核
部分で仕事をしている私たちの役割はますます大きくなってゆくという自覚も新たに
したいと思います。