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2024年11月 理事会挨拶

2024.11.01

12月2日から現行健康保険証は新規に発行されなくなります。政府が健康保険証の機能を個人番号カードに持たせた「マイナ保険証」への移行を進めているためですが、医療現場は混乱し、政府は迷走を続けています(実際には現在の保険証がそのまま使用でき、今後続々発行される資格確認書を利用することで何も問題は起こりません)。

個人番号は国内に住む全員に付されていますが、カードを持つことは強制ではありません。カードのICチップには顔写真データや公的個人認証の電子証明書が入っています。この仕組みは個人情報の集積に有用です。

政府の本音は全国民が個人番号カードを持つことです。国税を財源に1人最大2万円分のマイナポイントをばらまき、それでも足りないとみるや、健康保険証という国民の命綱を使って所持を強制しようとしました。国民に本当に役立つなら、自然に普及するはずです。政府が「アメとムチ」を駆使したため、カードの普及は国民のためでなく、政府に必要だからではと、多くの国民が勘繰ることになりました。

経済アナリスト・森永卓郎氏は「政府が個人番号保険証を強制するのはなぜか。ひとつは国民からの税金収奪の効率化だろう。金融機関の預貯金口座に紐づけされた個人番号カードに健康保険証を一体化させることで、税務調査に活用して増税に繋げる思惑が透けて見える。官僚の天下り先を増やす目論見もあるはずだ。個人番号カード関連の事業は…、官僚を肥え太らせる一大利権と化している。」と述べています。

個人番号カードの公的個人認証の仕組みは、政府が認める民間企業も活用できます(PHR;電子化された個人の医療情報に民間事業者がアクセスできる仕組み)。職業や健康状態、資産、免許や資格などの情報に購買歴まで結びつくことになれば、企業にとっては「宝の山」です。それはプライバシーの侵害と背中合わせであり、個人の尊重などを定める憲法13条との整合性が問われることは必至です。

保険医協会の医師らは、個人番号カードなどによるオンライン資格確認を行う義務が保健医療機関にないとして東京地裁に無効確認を求めて提訴しました。28日の判決では残念ながら敗訴しましたが、個人番号保険証で患者の保険資格を確認する体制整備を、法律ではない省令により医療機関側に義務付けることの問題点を主張することができました。

11月14日の神奈川民医連理事会では、神奈川県保険医協会より講師を招いて、学習会を開催しました。医療DX(保健・医療・介護の各段階で発生する情報やデータを共通化・標準化する取り組み)を通じて、医療費抑制・削減を進めたいという政府の目的が明らかとなりました。これに対して日本福祉大学二木立名誉教授は「医療DXにより医療費を抑制できたとの学術研究は世界的にもなく、『根拠に基づく』ことのない政策の典型」と述べています。増税のツールともなり、必要な医療費まで削減をもくろみ、個人の健康情報を企業の儲けの種に提供する仕組みの第一歩とする…個人番号保険証の半ば強制的な利用には、これからも徹底的に反対してまいります(一部東京新聞社説を引用しました)。