「健康の社会的決定要因(SDH)」は、既に理事の皆さんはよくご存じのことと思います。この間の物価高騰、医療機関も含めた企業体の経営困難等を背景にして、このSDHが横浜市医師会でも注目されているところです。去る1月27日には横浜市プライマリ・ケア医会、横浜内科学会総合診療研究会の合同研究会が開かれ、上記SDHについての学習会が開かれました。また今月の27日には横浜市医師会勤務医連絡協議会において「健康の社会的格差」をテーマに講演等が予定されています。汐田総合病院で研修医のスーパービジョンを行って頂いている横浜市大の長谷川修先生、横浜市東部病院の三角隆彦先生らが企画されたもので、当法人からは前者で宮沢由美病院長が講演され、後者では窪倉孝道顧問が発言を予定されています。
社会的格差としては、経済的理由による受診抑制、持続的なストレス、自己肯定感の低下、社会的孤立、移動手段の格差、教育の格差、職業選択の制約等があげられます。これらの個人に起因しない社会的要因が健康格差を生み出し、そして健康格差が経済格差を固定するとされており、一般的には「貧困と無知さえ何とかできれば、病気の大半は起こらずにすむ」とも言われています。SDHを学習した他県の民医連職員からは「自分も例外ではないことを知った。飼い猫と野良猫の例が出てきた、いつでも安心・安全で食事に困らない飼い猫に対し、野良猫は常に危険が付きまとい、緊張やストレスが絶えない環境で生活していることが多い。それぞれに寿命の差があるのは頑張りが足りないのではなく、周りの生活環境が大きく異なっていることが関係しています。」との感想が寄せられています。
そして、昨今大きな問題になっている高額療養費の上限額の引き上げは、負担増に伴う受診抑制を狙っていることが明らかです。この措置自体が、まさに経済的理由により健康格差を拡大し、がんなどで治療している患者さんの生命をも脅かすものです。到底許すことはできません。島根県の丸山知事は「憲法25条(生存権)違反と最高裁も判決するだろう。治療を諦める人が相当出てくると分かる数字を提案するのは刑法違反で、国家的な殺人に当たる」と指摘しています。見直し案の撤回を、強く求めてまいります。