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2025年6月 理事長挨拶

2025.6.01

去る5月25日、平和の尊さを考えるイベント「鶴見平和フェスティバル」が鶴見公会堂ホールで開かれ、わたしも呼びかけ人の一人として参加してまいりました。本集会は「憲法守ろう」をテーマに2008年から開始され、コロナ禍での中断時期を経て、今回で15回目を数えています。スタンダップコメディアンの松元ヒロさんが一人芝居「憲法くん」を演じ、戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条の意義を問いかけてくださいました。

当日ヒロさんが熱演とともに紹介された「資本主義の次に来る世界」(ジェイソン・ヒッケル著)を、ぜひ皆さんにもお勧めしたいと思います。次に来る世界、と聞いて「社会主義・共産主義社会」をイメージされた方もおられるでしょう。最近も日本共産党の志位議長が講演で、資本によって搾取され奪われている「自由な時間」を取り戻し、「人間の自由で全面的な発展」を可能にする自由な社会をつくろう、と呼びかけたことが話題になっています。

この著作では、資本主義が地球環境や社会に大きな破壊をもたらしていることを批判し、経済と生物界のバランスを取るための社会構造を提案しています。資本主義は際限のない「指数関数的成長」を信仰するシステムです。それは囲い込み運動(エンクロージャー、15世紀の英国で地主が農地を囲い込み、農民が耕作していた土地を強制的に取り上げ、農民の離村を促し、賃金労働者化を進め、農村共同体を崩壊させた)によってコモンズ(共有地)を破壊し、極端な不平等を生み出し、生態系に深刻なダメージを与えるところから始まりました。現代においても、企業は製品の寿命を短くして成長をむりに続けようとしますが、それはやがて破局を迎えざるを得ません。自然を一方的に収奪することなく、人間や生態系の福祉を優先する心と社会こそ望ましい、と著者は説きます。

本書を読み進めながら、近世日本の「循環型社会」との共通点について思いを馳せていました。江戸時代の日本は、地域循環型の持続可能な社会システムとして知られています。し尿や生ごみなどの有機物が農村で肥料として活用され、衣服や日用品のリユース、リサイクルが当たり前、「物を大事にする」という習慣が根付いていました。江戸時代の取り組みは、現代の「地産地消」の考え方につながっています。

毎年、世界で生産される食品の最大50%が廃棄されている現代のシステムが、このまま続けられる筈はありません。資本主義の次に来る世界、皆さんはどのような社会を思い描かれるでしょうか。