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2025年1月 理事会挨拶

2025.1.01

新年最初の理事会となります。本年もよろしくお願いいたします。

去る2024年9月、岡山県において開催された第16回全日本民医連共同組織交流集会に、横浜健康友の会や神奈川県各地の共同組織の皆さんと共に参加しました。全体会で「テレビで会えない芸人」松本ヒロさんの記念ライブに感銘を受けたことは、県連理事会等で報告した通りです。本日はその際ヒロさんが渾身のパフォーマンスで紹介してくれた文芸作品「未明の砦」について触れてまいります。主人公はトヨタを彷彿とさせる大手自動車工場に勤務する4人の非正規、派遣社員の若者たちです。それぞれの事情で寮にいるしかない夏休みを過ごすはずだった4人に海辺の田舎で過ごす機会を与えてくれたのはベテラン正規工員の玄羽さん。その「玄さん」が過酷な仕事中に亡くなった死を労災と認めず葬ろうとする会社に対し、労組を結成して立ち向かう物語です。その基礎には4人の若者が海辺の町にある「文庫」の中での学びがあり、そこから彼らの思いが動き始めます。彼らは戦後日本の米国による占領政策から85年の労働者派遣法の成立、そして20世紀末の派遣業務の原則自由化、2000年代初めの際限のない規制緩和によって、非正規労働者が四割にも達していること、実質賃金は全く上がらず、企業は内部留保を増大させ、平均賃金はG7の中で最下位になったこと、労働者がまともに扱われずにいること等を知ってゆきます。原作者の太田愛さんはテレビドラマ「相棒」の脚本家の一人でもあった、気鋭の作家です。本作中では松本ヒロさん作の「憲法くん」が紹介されるなど、作者の熱い思いを感じました。完成度の高いエンターテインメント作品でもありますので、皆様にも一読をお勧めする次第です。

そのようなことを考えていた折も折、1月13日付のしんぶん赤旗に「トヨタ労災隠し?」と題する記事が掲載されました。トヨタ自動車が、工場内で労働者が業務中に腰痛などの疾病を負った際、とりあえず健康保険での受診を指示して労災をすぐに使わせないようにしていることが同社のマニュアルなどで分かったそうです。関係者は「パワハラまがいの指示で、労災を受けなかった同僚がたくさんいる」と語っています。まさに小説で書かれた内容が明るみに出た記事だと思います。

翻って、私たちの日頃の労働安全への関わりも、きちんと振り返っておく必要があるでしょう。現在当協会では汐田総合病院、うしおだ診療所、そして法人全体を対象とした三つの労働安全衛生委員会が設置され、毎月会議が開かれています。メンタルヘルス対策や労災事例の共有等に取り組み、毎年アップデートされる労働安全衛生法への対応などを行っています。こうした労働安全衛生に関わる仕事は、職員が自らの力で職場の安全を守るため、産業医らの協力を得て策定した衛生計画をもとに一丸となって取り組み、労働環境を改善してゆくやりがいを感じられる業務です。職員の健康が守られることによって現場の意欲が上がるだけでなく、業務の生産性向上にもつながっていきます。今後も当法人グループでは旺盛に労働安全衛生の活動に取り組んでゆくことをお伝えいたします。