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5月理事会 理事長あいさつ

2018.6.07

さて、5月のゴールデンウィークを挟んで、国会審議が行われて来た訳ですが、公文書改ざん、隠蔽、データのねつ造、セクハラ問題と、底なしの政治不信、政治崩壊の状態が続いている中、いよいよ国会の会期末までわずかな状況となっています。安倍政権は、審議日程が限られる中、真相究明を先延ばししながら、TPP11の法案や働き方改革関連法案、カジノ法案などを数の力で押し切る構えで、メディアや国民の関心を分散させ、国民のあきらめを誘いつつ、強行突破を図るつもりの様です。

本来、高い倫理性や道徳観を持たねばならない為政者の一連の背徳行為や不法行為が、国レベルで及ぼす弊害の大きさ、日本という国の中での原理原則の崩壊ともいうべき事態を私たちは大変憂慮しているわけですが、肝心の国の最高責任者たちにはそうした憂慮というものが無く、私的に国政を動かして恥じるところがありません。こうした「権力をもてあそぶ人達」について、言及することすらやるせない訳ですが、今日はもう少し深めたいと思います。

先週土曜日の朝日新聞に「忖度を生むリーダー」は、やめない限り混乱や不祥事が続くのだという大変深い論考が載って、私は現状の重大さを一層認めない訳にはいきませんでした。これを書いた豊永さんという政治学者は、アイヒマンというナチスドイツでユダヤ人を絶滅収容所に大量輸送する任務に当たった人物の裁判を傍聴したハンナ・アーレントという哲学者の「悪の陳腐さについての報告」という副題がつく執筆物を引用して、前国税庁長官その他の官僚たちの法廷での言動が、「忖度」という言葉を介して、アイヒマンが法廷でヒトラーの虐殺命令の有無を問われた時のその姿に重なると喝破していました。

ナチス高官たちはヒトラーの命令の有無についてはそろって言葉を濁したそうですが、ハンナ・アーレントの分析は、ヒトラーへの絶対的忠誠心の陰には、ユダヤ人虐殺に関与した多くの個人の、出世欲や金銭欲、競争心や嫉妬など、実に陳腐な悪の動機が隠れていた。「ヒトラーの意志」はそうした人間的な諸々の動機の隠れ蓑になったと述べているそうです。豊永さんは、これを今の日本の政治状況に当てはめて、官僚たちの違法行為も辞さない安倍首相への「忖度」というものは、国家の為という建前をちらつかせながら、官僚個人の昇進や保身、経済的利得などの計算に強く動機づけられている。そこに国家犯罪に個人が従わされている全体主義の悪が露呈しているのではないか、ナチスドイツが信じられない行動をとった時の状況と酷似していると論考しています。

そうした論考の末の豊永さんの結論は、「安倍首相はやめる必要がある。一連の問題における直接関与がなくとも、忖度されるリーダーは忖度する側の個人の小さな、しかし油断のならない悪を国家と社会に蔓延させ、国家と社会、個人にとって危険な存在である」と結んでいます。公正と正義という言葉が価値を持たない国に日本がなり果てる前に、安倍首相を絶対やめさせないといけません。