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10月理事会 理事長あいさつ

2019.10.29

10月は消費税増税で始まり、大きな台風15号、19号がたて続いてくるという特別な月になりました。特に先週末に上陸した19号は東日本の広域に浸水被害を引き起こし、多くの人の命や住宅、生業が犠牲になり、なお避難を余儀なくされている人も多いという状況です。無情にも昨日の雨量も多く、被災地の人の心情を思うと心が痛みます。

この地域も鶴見川と多摩川に挟まれ、その増水状況と実際に起きた多摩川の氾濫で病院に浸水が及ばないか、大変心配な状況がありましたが、当地域迄は被害が及ばずに済み、ほっといたしました。しかし、単なる幸いな偶然に過ぎないとも感じます。郡山で浸水被害があった430床の民間病院はCTやMRI等の高額機器の被害を含めて25億円の損害が生じたとされ、今後の診療制限などの問題を含めると自力再建が不可能だと報道されていましたので、全く他人ごとではないと思います。当院でも浸水被害対策をもう少し考えないといけないと思っていますが、地理的条件を変えることもできず、大変難しい問題でもあります。

そうした中で、浸水による避難勧告が出た段階で障害を持つ在宅患者さんが病院と老健に避難を求めて入院・入所するというケースが3件あり、何とか円滑に対応することができたのは福祉避難所としての役割を果たせた一つの成果でした。こうした障害ある災害弱者の老健への避難時に救急車利用が是か非かという消防当局と介護現場とのやり取りもありましたが、緊急事態であることを考慮して、お互い弱者ファーストで対応できたのは良かったと思います。これと対極的であったのが東京都であった避難所への野宿者受け入れ拒否という対応でした。住民票が当該地域にない、住民でないというのがその理由とのことでしたが、とても気になるニュースでした。

そこにいる人間の命を、人間という理由で守るのが行政の役割であり、そうしたセーフティーネット機能への信頼によって社会は平静さを保ち、弱肉強食の世界にならない様に担保されていると思います。そうした意味で、今日本のあちこちで沢山の災害弱者が生まれている状況を安倍首相が先頭に立ってどのように解決してゆくのか、しっかり見極めなければいけないと思います。ちなみに、安倍首相は被災自治体を今年度予算の予備費およそ5000億円を活用して支援すると言ったそうですが、トランプ大統領の圧力に負けて政府がアメリカから爆買いしようとしている最新鋭ステルス戦闘機・F35は一機116億円、計画通りに147機も購入すれば総額6.2兆円になる額です。貴重な財政支出の優先順位について判断する力を安倍首相とその側近たちに改めて期待するばかりです。