トピックス

5月理事長あいさつ

2021.5.25

新型コロナ感染の拡大が収まらない中、先週末には緊急事態宣言と蔓延防止等重点地域の拡大判断について、専門家の危機感を前に政府方針が異例の変更を迫られるような状況となっています。それほどに変異株による猛威が各地域の感染拡大に影響し、医療のひっ迫が強まっているわけですが、何とか神奈川・横浜は踏ん張っている状況です。それも嵐の前の静けさかもしれず、予断できません。当法人の足元でも、職員の感染が散発し、火消しに追われる状況です。

こうした中で、政府が唯一頼りにするワクチン接種は、自治体頼みでようやく集団接種・個別接種・施設接種の枠組みが動き出したところに、菅首相が「1日100万回接種」、「高齢者ワクチン7月末完了」を掲げ、国主導での自衛隊を投入した大規模接種の仕組みが突貫工事で進められ、東京と大阪で今週から予約が始まり、横浜でも国からの指示で大規模接種の準備が始まるようです。高齢者は自治体の仕組みと国の仕組みの間で、電話がつながらずにオロオロし、二重予約の問題も生じ、すでに現場は混乱し始めています。これもワクチンの遅れが政権の命運を左右しかねない官邸の意向が優先され、現場と国民が翻弄されているとしか考えられない事案です。

感染の拡大、医療のひっ迫、ワクチン接種の遅れ、こうした深刻化する状況の中で、5月10日に開かれた衆参予算委員会では、緊急事態宣言の効果は出ているのか、宣言の出口はいつか、東京五輪・パラリンピックは本当に開けるのか? 様々な質問者が、様々な切り口から疑問をただしましたが、質問と関係のない答弁を繰り返すだけの菅首相に、多くの国民が失望したのではないでしょうか。時短要請や休業要請、イベントの中止要請、外食や会食の自粛など、国民に多くの制限を要請しながら、五輪だけを中止しようとしないことは全く理解不能。開催可否を判断する条件や要素も一切議論しないことも非常に不誠実な態度です。開催まで時間が切迫するほど、進退が窮するのではないでしょうか。

物理学にエントロピーの概念(ある系や空間における無秩序さの度合い)がありますが、閉鎖系ではエントロピーが増大する法則として有名です。国民に閉ざされた菅政権というシステムの中では、矛盾と無秩序が増大を続け、日本社会を乱雑・混沌・利用価値の低い状況にとどめてしまうのではないかと思います。これを秩序ある利用価値の高い状態に戻すためには、開かれたシステム、つまり国民に開かれた政治にすればよいのですが、そのためには「外側から故意に仕事力を加えなければならない」と教科書は教えています。国民の声と働きかけが今の政治の刷新に必要不可欠な所以です。