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10月理事会 理事長あいさつ

2016.11.17

今日の開会挨拶は、理事の皆さんに医療情勢を広く知ってもらいたいと考え、神奈川県で進んでいる地域医療構想についての学習の機会にしたいと思います。県の保健医療部医療課が作成した「地域医療構想について」(PDFファイル)を参考にしつつお聞きください。

神奈川県の人口ピラミッドは、1970年当時の末広がり型から、2050年に向けて尻すぼみ型の少子高齢化の進行が急速で、スライド2には神奈川県の高齢比率の進行と総人口の減少の推移が明確となっています。スライド3は鶴見区のデータで、2010年人口は2035年には、65~74歳で1.25倍、75歳以上で2.14倍になるとされています。そこで、スライド4では地域医療介護総合確保推進法ができて、団塊世代が後期高齢者となる2025年を目標に、医療・介護サービスの提供体制の改革、関連法規の一括改正が行われた経緯が書かれています。医療関係での主な内容はそこに書かれている➀~➂の3つで、スライド5-8に説明されているように、➀の病床機能届け出制度は、平成26年度から毎年、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つの医療機能類型に即して、各病院が都道府県に対して、自らが担う医療機能を病棟単位で自主的に届け出る制度です。②の地域医療構想の策定とは、すでに報告されているビッグデータを基にして、二次医療圏ごとに、医療機能ごとの2025年度の必要量を算出して、医療機能の分化や連携を促進し、さらには増床なども検討してゆくものです。➂はそれを推進するための消費税を財源とした財政支援制度の創設です。結果的に、我々は2025年度を焦点とした将来の医療需要を見ながら、自主的に医療機能を選択してゆかざるを得ないことになります。見える化された需要に対して供給側が自主選択や自主規制をしながら、目標に向かって自然収斂してゆくイメージです。
2001年の汐田総合病院開設以来、うしおだグループは病院を中心に地域内の適切なポジショニングを確保すべく、「うしおだビジョン」の実現を目指した様々な構造転換を繰り返してきました。しかし、これからは病床機能届け出制度と地域医療構想を錦の御旗にして、公の仕組みとして全病院がポジショニングの実践を迫られてゆく訳です。
さて、そうした仕組みの結果出来上がる医療と介護の全体像を図示したのがスライド9に示す「神奈川県の将来のめざすすがた」です。左側には総合確保法の➀と②で推進する「効率的で質の高い医療提供体制の整備」が書かれており、右側には地域・在宅を中心に展開される「地域包括ケアシステム」が描かれています。こうした理想的なすがたが実現するかどうかは、医療・介護における人権保障の問題とも深くかかわっているわけですが、目指す方向性は理解して組織的な備えをしてゆかなければならないと思います。それは、横福協の運営をあずかる法人理事会の責務でもあるわけです。
さて、スライド10には、神奈川県の病床機能別の現時点での病床数が書かれていて、総数として約62000床が届け出されています。ついで、スライド11には地域医療構想で算出された2025年度の神奈川県の必要病床数が書かれています。神奈川県全体では72400床ほどが必要とされていますので、現時点で全県的に10000床以上、横浜市では7000床強の病床の不足があると算出されています。スライド12は、鶴見区内の病床機能ごとの現状数と2025年度の必要病床数を対比させた資料ですが、スライドに示すように、急性期病床と回復期病床を中心に不足があり、合計で約900床の不足が見込まれるという計算になりました。この数字は必ずしも整備しなければならない絶対的なものではありませんが、増床の余地が大きく存在しており、人口減少によって病床削減を余儀なくされる日本のその他の人口減少地域から資本移転があり、新規開院の手上げがあってもおかしくない地域に鶴見はなっているという意味でもあります。
スライド13は、そうした将来の病床整備のルールについて検討している厚労省のワーキンググループの報告内容です。その中断に「地域医療構想に盛り込まれる2025年の必要病床数が、既存の病床数を大きく上回ると見込まれる場合については(横浜や鶴見が典型的にそれに該当)、医療法の特例として、毎年基準病床数を見直す」と書いてあります。そうしたルール変更は、おそらく医療法と地域医療計画が変更される平成30年からになるのではないかと思われます。
それは、あと1年半後のことですが、そうした事にも備えて、地域医療情勢を正しく理解し、法人の永続的発展と経営維持のためにも、今現在、私たちは何を備えておかなければいけないか、主体的力量と将来求められる力量に照らしてどういう基盤整備をしておかなければいけないのか、長期的視点で各理事の皆さんにもお考えいただければと思います。前回理事会で話し合った、「法人職員の働き方問題」もそうした脈絡の中で提案されているものです。よろしくご理解をお願いします。